片頭痛のメカニズム

片頭痛の発生のメカニズムについては、およそ下図のように理解されています。つまり、その発生にはセロトニンという物質が関係していて脳血管の拡張によって頭痛が発生するのだと。 

血管甲
血管乙
血管丙
その頭痛の特徴としては次のような事柄があります。
  • 片頭痛には代表的な3種類の型があります。典型的片頭痛、普通型片頭痛、群発頭痛です。片頭痛は頭蓋内の血管が拡張する際に生じます。およそ女性の18%〜17%、男性の6% に片頭痛があるとされます。
  • 片頭痛の原因は、それが全てだというわけではないのですが、脳血管の拡張と炎症により発生した疼痛が脳の中枢まで達して発生したものとされています。このような変化をきたす血管は頭皮や頭蓋骨や脳表にあるのですが、痛みは頭の中からのように感じられます。片頭痛発作に伴った疼痛は通常4時間から72時間持続します。
  • 片頭痛では痛みは片側性で拍動性である場合が多く、時には吐気や嘔吐を伴い、さらに騒音とか光が頭痛を悪化させることがあります。片頭痛患者の25%では頭痛発作の前に前兆があります。
  • 年齢としては10代から20代に多く発生し、30代になるとあまり見かけなくなります。40代の片頭痛となると稀で、逆に片頭痛以外の頭痛を疑った方がよくなります。つまり片頭痛は年齢とともに自然に消失するものだと思っていいでしょう。片頭痛は何歳くらいからみられるのか不明ですが、小学生低学年でもあります。
  • 片頭痛の分類として、以前は典型的片頭痛と普通型片頭痛と群発頭痛を合わせて片頭痛としていましたが、最近では群発頭痛を片頭痛とは別に分けるようになりました。

【片頭痛の種類】
典型的片頭痛
  • まず前兆が現れます。それは閃輝暗点という、光が見え、これが時間とともに拡大して大きくなります。やがて、その中心部に暗点が現れたり、半盲(左あるは右視野が見えなくなる)、時には半身麻痺やしゃべりにくくなる、といった症状が現れたりすることがあります。この前兆は大抵1分間以内に消失し、やがて片側性に心臓の鼓動と一致するズキンズキンといった拍動性の頭痛が始まります。この頭痛は1時間ほどで最大に達し、数時間の経過で改善します。しばしば吐気・嘔吐を伴います。
普通型片頭痛
  • 中年女性に多い傾向があり、前兆はありません。頭痛の性質等は前述の典型的片頭痛と同じですが、頭痛が発生してからの経過は、長く、1日中続くことがよくあります。よく緊張型頭痛を合併(混合型頭痛)しています。一番よく見受けられる片頭痛です。
群発頭痛
  • 20〜30歳代の男性に多く女性の約五倍、夜間、特に明け方に発生する傾向があります。片目がえぐられるように、あるいは焼けつくように痛み、これが1時間程続いて改善します。頭痛に伴い、頭痛の発生した側の眼の結膜が赤くなり、涙が流れ、鼻汁がでます。このような痛み発作は1日に何回もあり、しかも、いったん始まると数ヵ月も続きます。一般には、吐気、嘔吐は伴いません。
  • 実際問題、脳神経外科などではこのタイプの頭痛を見うける事は稀です。その理由は結膜炎類似症状及び鼻炎類似症状のためアレルギー性鼻炎かと考え耳鼻科あるいは内科を受診する場合が多いためのようです。

以上の分類とは別に「女性に特有」とか「何かを合併した片頭痛」が取り上げられる事があります。
特に後者は玄人受けする片頭痛のようです。
  • 月経時片頭痛
  • 片頭痛性眩暈症
    眩暈の分類に含まれる事が多い。若い女性に多く片頭痛の既往や家族歴がある。頭痛ととともに、あるいはやや遅れて回転感を伴った眩暈をきたし、嘔吐などをともなう場合もある。頭痛と眩暈は数日の経過で改善することが多いが、一定間隔をおいて再発することも多い。小脳梗塞・出血などの脳内疾患と似た症状のため注意が必要。

【片頭痛の増悪因子】(これは、注意した方が良いという物です。)
  • アルコール
  • 過労・ストレス
  • ある種の食物(チョコレート・チーズ等)

【診断】
診断につきましては別項にIHSの診断基準に準拠したものを参考までに掲げます。
参考【治療】
片頭痛
  • 片頭痛の薬物療法には、頭痛発作時の治療と、発作間欠期の治療で若干の違いがあります。頭痛の程度が軽い場合は、頭痛発作間欠期の治療の必要性はあまり無いのですが、頭痛の程度が強い、前兆のある場合には、その程度が強い、あるいは頭痛発作の頻度が月に二回以上もある、といった場合には頭痛の無い時期にも治療が必要となります。
  • 片頭痛発作時、拡張した血管を収縮させるため酒石酸エルゴタミン製剤を使用します。なお、この製剤は血管収縮作用があるので、高血圧など疾患がある場合には注意を要しますし、妊婦、血栓性静脈炎、冠不全では使用しません。
  • 片頭痛間欠期の治療は予防的なもので、βブロッカーやカルシウム拮抗剤やエルゴタミンの製剤を使用します。
  • 片頭痛発作時の疼痛が軽度の場合には、非ステロイド消炎鎮痛剤を使用します。しかし厳密な意味では片頭痛に対して、このような鎮痛剤を使用することは日本では健康保険で認められていません。
群発頭痛
  • 頭痛発作時、100%酸素吸入をします。酸素が群発頭痛に有効である機序は必ずしも充分に解明されていません。そのためか健康保険では認められていません。しばしばアルコールによって頭痛発作が誘発されるので、これを避けることが肝要です。薬物療法は片頭痛におけると同様ですが、片頭痛に対する薬物効果より、本症に対する効果は劣ります。その他には抗ヒスタミン剤である塩酸シプロヘプタジン(副作用として発疹、眠気、めまい。口渇、悪心など)、副腎皮質ホルモンであるプレドニゾロンを使用することもあります。これらのほとんど治療は健康保険適用外となっています。
  • 頭痛間欠時の治療としては、炭酸リチウムが比較的知られています。これはセロトニンを始めとする各種の神経伝達物質の安定化により作用するものと考えられています。一週間に一度、血液中濃度を調べ、0.6〜1.2mEq/L に保ちます。二週間以上投与をしても効果が無い場合は中止します。ステロイドとの併用はしません。副作用としては胃腸障害、振戦、口渇、多尿、浮腫などがあります。この治療も健康保険適用外となっています。
【独り言】片頭痛にこれだけ健康保険の適用外が多いのには、一つには充分な頭痛緩解効果のある薬剤が無かったのも一因かと考えられます。それに加えて片頭痛が病気であるといった認識が為されていなかった事も理由の一つに挙げられるかもしれません。「痛くなったら〜すぐ・・・」では無理もないかも。とはいえ相当な努力を払っても痛みが改善しない頑固な片頭痛も多いのも事実です。しかし、近年になって次々と新しい片頭痛の薬剤が登場してくるようになりました。
新しいところではスマトリプタン系の薬でしょうか。この薬はその効果もさることながら、その値段の高価な事でも名をはせています。注意すべきはエルゴタミン製剤を使用中の人や過去に血管閉塞性疾患、例えば脳梗塞であるとか心筋梗塞をきたした事がある人は服用してはならないという但し書きがある事でしょうか。