*岡山弁の特徴

電車に乗って駅名のアナウンスを聞いているとアクセントを最初の「ひ」に置いて姫路と発音しています。しかし「ひ」にアクセントを置く発音なら備前ではキノコの「しめじ」茸の意味になり、姫路の意味ならば最後の「じ」にアクセントを置きます。同様に、山口県へ行けば卵の発音で最初の「た」にアクセントを置きますが、備前では「ま」乃至「ご」にアクセントを置きます。そのような変化は興味深いのですが残念ながら当サイトの関心事では無いのでここでは扱っていません。

さて「てー」と「らー」が岡山弁であるのかどうか、それは知りません。
ただ、これらの語が文章の最後に出てくるといかにも岡山弁らしく聞こえるようになります。
「結婚したんじゃてー。」
「よー勉強しょーらー。」
という具合。
「てー」の方は伝聞の助動詞で「らー」の方は様態の助動詞という事でしょう。
「てー」を「そうな」に、「らー」を「ような」に置き換えてみるとわかりますが、あまり岡山弁らしく聞こえません。
「結婚したそうな。」
「よー勉強しょーるよーな。」
うーーん???意味は分かるけれど、そんな言葉を実際に使わないような気がします。
「てー」の方は普通「じゃ」の後ろについて「じゃてー」という使い方になります。

このように岡山弁には語を引き伸ばして使う言葉が結構あります。
「てー」に濁点をつけただけの「でー」も動詞の後ろに接続して、自慢を表現する意味になります。
「勉強しょーんでー(勉強をしているんだぜ【俺ってえらいだろ】)。」
助動詞とは違うけれど理由を説明する「けー」なども、いかにも岡山弁らしくなります。
「勉強がすんだけー遊んでくらー(勉強が終わったから遊んでくるよ)。」
といった調子。
そのような岡山弁らしさを演出している助動詞から調べてみます。
岡山弁で使われる助動詞には以下のような物があります。

(1) 岡山弁の助動詞
助動詞 意味 接続形 例文 備考
す(さす) 使役 未然形 仕事をさす(仕事をさせる) 上一段、下一段、カ変動詞では「さす」
まー 否定推量 未然形 まだ寝まー(寝ないだろう) 五段活用であろうとなかろうと終止形にも接続可で問題なし
られー(れー) 命令 未然形 休まれー(休みなさい) 五段とナ変動詞は「れー」が接続、備前方言
られなー(れなー) 否定命令 未然形 休まれなー(休むな) 五段とナ変動詞は「れなー」が接続、備前方言
ーえ 勧誘 未然形 こーえ(来ましょうよ) 接続できるのは岡山弁の未然形
【う】ぜー(でー) 推量 未然形 しょうぜー(するでしょう) 接続できるのは岡山弁の未然形
【ん】じゃ 断定 終止形 来るんじゃ(来るんです)
【ん】ぞな 断定 終止形 来るんぞな(来るんです)
【て】じゃ 尊敬 連用形・進行態 来てじゃ(来られます)・きょーてじゃ
【ん】でー 強調

自慢
終止形 起きるんでー(起きるんですよ)。

おめーはしるまーけど、こつがあるんでー(お前さんは知らないだろうが、秘訣があるんだぜ)。
強調の時は語尾を下げる。

自慢の時は語尾を上げる。
がー・がん 強調 終止形 起きるがー(起きますよ)
ねー 未来 終止形 薬を飲むねー(飲もう)

明日は天気になるねー(明日は晴れるだろう)
英語の"will"と同様で一人称では意思を表す。ただし英語の"will"と違って"be"動詞には接続できない。「なる」のような一般動詞を介在させる必要がある。備前方言
てー・てや 依頼 連用形 読んでー(読んで下さい) 岡山弁連用形だけ
てー 伝聞 進行態 読みょーったてー(読んでいたとさ) 連用形に「ょー」+「る・た」+「てー」。進行態。
らー 様態 進行態 きょーらー(来ているよ) 連用形に「ょー」+「らー」。進行態
【ん】せー 命令 連用形 いきんせー(行きなさい)
ねー 命令 連用形 きねー(来なさい) 備中方言
【ん】ちゃい 命令 連用形 きんちゃい(来なさい) 美作方言
【ん】さる 尊敬 連用形 書きんさる(書かれる) 進行態+「りんさる」も同じ、書きょーりんさる
【て】つけー 依頼 連用形 けーてつけー(持って下さい) 通常、連用形+「てつけー」、つかんせー・つかーせー

「てー」と「らー」がありますね。でもそれらの助動詞の備考欄にある進行態とは何でしょうか?

【閑話1】
話は変わりますが、上記の表に「ねー」が二個あります。

備中方言では、例えば「する」の連用形に「ねー」を接続し「しねぇー」というのは「しなさい」という命令の意味です。一方、備前方言では「する」の終止形に「ねー」を接続して「するねー」と言って「するでしょう。」という未来形で使います。今ではどうだか知りませんが、少し前には備中の人はこの備前の方言を知らず、同様に備前の人は備中の方言を知りませんでした。それゆえ、備前の人が連用形の「ねー」を聞いても、終止形の「ねー」と言い間違えたのだろうと解釈してしまいます。命令形では無く、未来形だと解釈してしまうのです。その逆の場合、備中の人が備前の終止形「ねー」を聞いても未来形で無く命令形だと誤解しているのでしょうが、この場合はあまり被害が発生する事はないようです。前者の場合は、状況次第で以下のような事になってしまいます。

多分、倉敷(備中)生まれの人だったのだろうが、やたらに言葉の語尾に「ねぇー」を付けている女性がいた。これはずいぶんとへりくだった言い方になります。岡山弁(備前方言)では動詞の終止形の語尾に「ねぇー」を付けて二人称で使うと、発言主は相手が自分と対等か、あるいは相手が自分以上の立場の人物と考える場合に使うからなのです。ほぼ謙譲語に近い使い方になります。

例えば「仕事をするねぇー(動詞終止形)」と言えば、相手に対して「お前さんのやる仕事は信用できるから、好きなようにやっていいよ。」といった意味合いがあります。その女性が「しねぇー(動詞連用形)」を繰り返すので、まあそのうち手の空いた時にでもするか、と思っていました。

ところが、やがてその女性がどうやら上司に告げ口したらしく、上司がやって来て「お前はどうして指示通り仕事ができないのだ?」。女性は「仕事をしろ」と命令していたつもりなのに私がさっぱり仕事を始めないので怒ったのでしょう。上司が何を言っているのかさっぱり分からなかったのですが、やがてその上司もどうやら倉敷弁の話者のようで、「ねぇー」を私とはまったく違う意味で使っているようだという事が薄々分かってきたことでした。

これが一つでも逆の状況なら、悲劇は避けられたのですが、最悪の状況になりました。

【閑話2】
推定の「ぜー」と未来の「ねー」にはニュアンスの違いがあります。「ぜー」の方は発言者がほぼ間違い無いと思っているのに対して、「ねー」の方はそうなって当然だという社会的な常識からの発言になります。例えば「バスがこーぜー(バスが来るに違いないはず)」といわれれば、1時間か2時間に1台のバスが止まる田舎のバス停を想像していただけるといいでしょう。発言者からすれば「最終便はまだだろう、とか、間もなくバスが到着する時間だろう」などと考えながらの発言になります。したがって、この「ぜー」は発言者にとっては思いを込めての発言となるので返事は「そうですか、どうもおおきに。」ということになります。一方「バスが来るねー」と言われれば、15分に一台のバスが止まるような都会のバス停を想像していただければいいでしょう。バスは来て当然なのです。返事は「どうも。」程度の簡便なものでよい事になります。そのようなバス停でもスト決行中で、バスがいつ来るのやら分らない場合はやはり「ぜー」を使う事になるでしょう。
もっとも端的に両者の違いが出るのは「ぜー」だけを使って「ねー」をあまり使わないケースです。そういうケースとは発言者が見栄を切るとか相手の意見に反対する場合です。

(1) そねーなこたーやすーすもーぜー(そんな事は簡単に済むでしょうよ)。
(2) そねーなこたーやすーすむねー(そんな事は簡単に済むでしょうよ)。

標準語にすると同じになってしまいます。でも、両者は意味が違います。(1) の方は「俺」がすれば簡単に済むだろうが、他人がやるとどうだかわからないという意味で、暗に「俺にまかせなよ」という意味を込めているのですが、一方 (2) の方は「誰がやっても」簡単に済むでしょう、という意味です。もっと云えば「そんな簡単な事くらいお前やれよ」という(1)とは逆の意味をも含んでいるのです。

【閑話3】
断定の助動詞「じゃ」はさすがに年寄りくさいのか、若い女性の間で使われる事は少ないです。その代わりに「よー」「やわ」といった言葉が使われます。例えば
「えー湯じゃ」は
「えー湯やわ」あるいは「えー湯なんよ」になります。
「じゃ」が流行る以前には「ぞな」という言葉もよく使われていました。

(2) 岡山弁の動詞活用

動詞の活用形は普通「未然形」「連用形」「終止形」「連体形」「仮定形」「命令形」があります。
岡山弁の助動詞を眺めてみると、「てー」「らー」「りんさる」を接続させる場合に「連体形」では説明に苦労します。
そこで登場してくるのが「進行態」です。この言葉は「進行形」でもいいのでしょうが、整合性のために「進行態」とします。
何故「進行」かというと標準語の進行形に該当するからです。
「進行態」の作り方は、動詞の連用形+「ゅ/ょ」+「ー」+「る(変化するので加えない方がいいかも)」、となります。


動詞
未然形
連用形
終止形
連体形
仮定形
命令形
進行態
五段
書く
かか・かこー
かき・けー
かく・かかー
かく
かきゃー
かけ・かけー
かきょーる
上一段
着る
き・きゅー・きょー

きる・きらー
きる
きりゃー
きろ・きー
きゅーる
下一段
寝る
ね・ねょー

ねる・ねらー
ねる
ねりゃー
ねろ・ねー
ねょーる
カ変
来る
こ・こー・こよー

くる・くらー
くる
くりゃー
こい・けー
きょーる
サ変
する
し・せ・しょー

する・すらー
する
すりゃー
しろ・せー
しょーる
ナ変
往ぬる
いな・いのー
いに・いん
いぬる・いぬ らー
いぬる
いぬりゃー
いね・いねー
いにょーる

上表の赤文字で示す岡山弁の未然形は意志を表わしています。例えば「着る」の未然形「きょー・きゅー」は「着るぞ」という意志を表現しています。「服を着よう」という意味で「服ぅきょーきょー」とか「服ぅきゅーきゅー」と言います。この繰り返しは意志をはっきり表現させるためです。蛇足ながら、さらに「服」を省略して「きょーきょー」とか「きゅーきゅー」と言ったりすると鳥や犬の鳴きマネに近くなってきます。

一言注意を申し上げるなら、上表の連用形の一部と連体形で岡山弁を示す赤文字が無いのは、標準語と同形であるためです。

さて、ここから最初の進行態に話が戻ります。上表の「進行態」の最後の「る」は、より正確には「る」を書かない方がいいのですが、説明のため便宜的に挿入しています。
「伝聞」の助動詞「てー」を接続すると
●きょーるてー(来ているんだとさ)、または、きょーるんじゃーてー
●きょーたてー(来ていたんだとさ)
「様態」の助動詞「らー」を接続すると
●かきょーらー(書いているよ)【「らー」」の場合には最後の「た/る」が入らない】
●きゅーらー(着ているよ)
尊敬の助動詞「りんさる」を接続すると
●ねょーりんさる「寝ておられる」【この場合にも最後の「た/る」が入らない】

以上のように岡山弁の助動詞と動詞の岡山弁活用は岡山弁らしさの大きな要素になります。

**** 岡山弁の未然形「意思」・「勧誘」・「推量」について ****

例えば「読む」という五段動詞の未然形は「よま」ですが、岡山弁の未然形では「よもー」となります。
実は岡山弁の未然形は、それ単独で「意思」・「勧誘」・「推量」を表現できます。
標準語を喋る人には意味不明と感じられるかもしれません。

これを例文で説明します。
●意思【1】(私が)本を読もー(本を読むぞ)。
●勧誘【2】皆で本を読もー(皆で本を読みましょう)。
●推量【3】(彼は)いずれ本を読もー(そのうち本を読むだろう)。

と、まあこのように使うわけです。
考えようによっては岡山弁とは、ひどくいい加減な方言です。何しろ「意思」・「勧誘」・「推量」の区別がつかない言葉なのですから。
言葉の前後関係から、どの使い方か推理するという実にスリリングな方言だとも言えます。

しかし、備中に住んでいる人なら、【2】と使う場合には勧誘の意味を明確に表すために
●勧誘【4】皆で本を読もーえ(皆で本を読みましょう)。
という風に最後に「え」を追加すれば良いのだと言うでしょう。

さて、【1】と【3】についても同じような表現方法は無いでしょうか?
備前では【3】については
●推量【5】本を読もーぜー(本を読むだろう)。
という風に最後に「ぜー」を追加すれば【強い意味】での推定になります。もう一つの推定は標準語の「まい」が訛った「まー」を使う【弱い意味】での推定です。
(1) なかろーぜー(無いだろう)。
(2) なかるまーぜー(無いだろう)。
(3) なかるまー(無いだろう)。

標準語では同じ意味になります。この三種類の言い方にはニュアンスの違いがあります。およその違いは(1)から(3)にかけて発言者の推定に対する自信が欠けてきます。ですから (3) は根拠の無い推定になります。俺はよく知らんけど無いだろう、程度の意味です。あと、付け加えると (3) は、そんな事あるはず無い、といった常識的な判断が含まれている事もあります。逆に (1) の方は何か意味を含んだ推定になります。例えば俺はその理由の見当はついてるんだよ、などの意味を含んだ言い方になります。(2) はその中間でちょっと自信がないけど多分無いんじゃないかな、程度の意味になります。

備前では【4】の使い方も普通にするので、備前で「読もー」を聞いたら、それは意思を表している可能性が高い事になります。
でも、もう少し何とかならないでしょうか?
それがあるのです。
備前地域の全てでは無いでしょうが、かなり広い地域で標準語の終止形の後ろに「ねー」を接続して一人称で使うと、意思を表します。
●意思【6】(私が)本を読むねー(これから本を読むぞ)。
この使い方をすると意思しかありません。【1】と【6】には同じ意思でも強弱の差があります。【1】の方は自分が予定しているだけの意思ですが、【6】の方は自分がそうしなくちゃいけない、という強い意志を表します。英語で言えば、"I will have to read." ほどの意味になります。ダグラス・マッカーサーの " I shall return." を岡山弁にすると「戻ってくるねー」になります。これを「ねー」を使わず「戻ってこー(一応格好をつけるために言うだけは言っておこうという意味になります)」では何とも力の抜けた発言になりますね。
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(3) 岡山弁の時制

【3-a】岡山弁連体形に接続する「とる」と「とく」について。

五段 上一段 下一段 カ変 サ変 ナ変
基本形 書く 着る 寝る 来る する いぬる or いぬ
とく(存続未来) けーとく きとく ねとく きとく しとく いんどく
とる(存続現在) けーとる きとる ねとる きとる しとる いんどる
とった(存続過去) けーとった きとった ねとった きとった しとった いんどった
ょーる(進行態現在) かきょーる きゅーる にょーる きょーる しょーる いにょーる
ょーた(進行態過去) かきょーた きゅーた にょーた きょーた しょーた いにょーた

「とる」は存続を表現する助動詞、「とった」はその過去形、「とく」は「とる」の未来形です。
ここで取り上げた理由は、動詞の活用で取り上げた「進行態」と、この「存続」形が標準語では同じ意味になってしまうからです。岡山弁の話者にしてみれば、 存続と進行態は少し違った意味になりますが、瑣末な点かと思いますので付録程度とお考え下さい。

存続という意味では、何となく理解する事が難しいのですが、これを完了形と考えると進行態との違いが明瞭になります。つまり、存続は同時に完了形の意味も持っているので、結果態などとも表現される事があります。
この事は「死ぬ」という動詞で考えるとはっきりします。「死にょーる」とは心臓が止まりかかっている状態で、「死んどる」とは心臓が止まってしまった状態で完了あるいは結果を表しています。これをそれぞれの過去形にして「死にょーった」とは死にかけたものの現在は生きている状態で、「死んどった」とは過去に死んで現在も死んだ状態(存続)だという事を表しています。

ここまでの話から、英語の時制に岡山弁を対応させてみます。ただし、英文の翻訳テストで使っては零点になる恐れがあります。

【3-b】未来形
動詞の終止形(岡山弁の終止形では無い)+「ねー」
これで、英語の「will」と同じ使い方と意味を表現できる。
●"The bus will be here." --> 「バスが来るねー」
●"I will do it." --> 「やってみるねー」

【3-c】完了形
岡山弁連体形+「とる」
これで現在完了形を表現できる。
●"He has died." --> 「彼は死んどる」

【3-d】過去完了形
過去完了形は「とる」の代わりに「とった」を使う。
●"He had died." --> 「彼は死んどった。」

【3-e】現在進行形
岡山弁進行態+「ょーる」
これで現在進行形を表現できる。
●"He is dying." --> 「彼は死によーる」

【3-f】過去進行形
過去進行形は「ょーる」の代わりに「ょーた」を使う。
●"He was dying." --> 「彼は死にょーた」

【3-g】未来進行形
【3-b】に書いた通り「ねー」は動詞の終止形に接続するが、岡山弁の進行態に接続して未来進行形を表現する。
●あすの今ごろあー京都につきょーるねー(明日の今時分は京都に到着寸前でしょう)。

【3-h】未来完了形
存続形の「とく」「とる」「とった」のいずれにでも未来形の「ねー」が接続できるかと云えば、それは無理です。存続未来形の「とく」にしか接続しません。「とくねー」と使って未来完了形を表現します。これは、第三者の行為では無く、もっぱら自分の行為の未来に関しての表現に使用します。
●明日の今ごろまでにゃー仕事ぉー済ませとくねー(明日の今頃までに仕事を済ませておこう -- 自分用の仕事だけ、例えば農作業などに使う)。もっぱら一人称で使った。
*「とくねー」を使わなず「とく」だけでも文法的には間違いではありませんが、実際には滅多に使いません。「とく」+強調・断定の助動詞「が・がん・がな・んじゃ」として使います。
●明日の今ごろまでにゃー仕事ぉー済ませとくがん(明日の今頃までに仕事を済ませておきます -- この用法は第三者との契約の上でやっている仕事、請負作業などに使う)。およそ「が+」の場合は二人称、「んじゃ」の場合は一人称として使います。

(4-a) 岡山弁の命令形

次なる岡山弁のツボは命令形です。
一口に岡山弁といっても備前・美作・備中では違いがあります。それが典型的に残されているのが命令形です。
動詞の活用形の岡山弁命令形にある通りで下記のようになります。
五段 上一段 下一段 カ変 サ変 ナ変
基本形 書く 着る 寝る 来る する いぬる or いぬ
岡山弁命令形 かけー きー ねー けー せー いねー
否定命令形 かくな きな ねな くな すな or せな いぬるな or いぬな

これからすると、標準語の命令形に単純に「ー」を接続させて語尾を引き延ばした物ではありません。
五段とナ変以外の命令形は標準語命令形の語尾の「る」を省いた物に「ー」を接続させて語尾を引き延ばした物になります。

(4-b) 否定命令形
標準語では終止形の語尾に「な」を接続して否定命令にします。
書く --> 書くな
岡山弁では五段とナ変の動詞は標準語と同じ形になりますが(サ変には特殊形あり)、それ以外は終止形語尾の「る」を省いた物に「な」を接続して否定命令にします。
(カ変)来る --> 来るな --> くな
このような命令形や否定命令形は上下関係が厳しい時代や親子関係のような場合には普通に使えたのでしょうが、元来その言葉の響きが強すぎてあまり一般的に 使えるものではありませんでした。

そこで助動詞を使って表現を和らげるようになったようです。その構成方法は岡山でも備前・備中・美作でそれぞれ異なっていました。

(4-c) 備前の命令形
備前では動詞の未然形に「られー(れー)」を接続します。これは尊敬の標準語助動詞「られる(れる)」の命令形です。尊敬命令形とでも呼べばいいのでしょうね。
(カ変)来る --> こられー
単純な命令形の「けー」と較べると助動詞を使った「こられー」の方が表現が和らかになります。
否定命令形は語尾に「な」を接続させ、語尾を延しません。
(カ変)来る --> こられな

これ以外にも動詞の連用形に「んさい」を接続し、「来る」の場合には「きんさい」という命令形も使われます(これは古い言い方)。
さらに動詞の連用形に「ーや」を接続し、「来る」の場合には「きーや」・「する」の場合には「しーや」とか、備前命令形+終助詞「や」で「けーや」・「せーや」という命令形も(これはガラが悪い言い方)使われます。
備前北部などでは、さらにこの「ーや」の語順を逆にして「する」の連用形「し」に接続して「しやあ」とい命令形もあります。

(4-d) 美作の命令形
動詞の連用形に「んちゃい(んさい)」を接続します。由来は、尊敬の岡山弁助動詞「んさる」が変化した物だろうと思います。
(カ変)来る --> きんさる【来られる】 --> きんさい --> きんちゃい
否定命令形は語尾に「るな」を接続させます(よね?)。
「きんちゃるな」

(4-e) 備中の命令形
動詞の連用形に「ねー」を接続します。「ねー」の由来は不明です。
(カ変)来る --> きねー
表現があまり和らかになっているような気がしないのですが。
そして否定命令形の構成法がよくわかりませんね。

(4-f) 命令形のまとめ
この「んさい」という形は実は岡山弁の古い命令形なのです。
「来る」-->「きんさい」
それが美作では音便化して「きんちゃい」になり、
一方、備前では古い尊敬の助動詞「んさる」から新しい尊敬の助動詞「られる」の命令形「られー」を使った形になったとみる事ができます。
また、備中の命令形「ねー」は
「来る」-->「きんさる」-->「きんさい」-->「きない」-->「きねー」
と変化したのだろうと考えられます。
そして否定命令は「きないな」あるいはその音便形の「きなんな」だろうと思うのですが、、、。

【閑話4】
備前・美作・備中の命令形が以上のように異なるのに対して、命令形以外の文章の語尾がこれら三地域でそれほど見事に異なるわけではありませんが、テレビのワイドショー的な見方をすれば以下のように云ってもいいかと思います。
備前 ---> じゃ + ぞな、美作と備中北部 ---> ちゃ、備中南部 ---> じゃ

【重要】以上のように地域によって命令形が別々になっていますが、実際にその形の命令形を聞く事は少ないような気がします。 と申しますのは命令形の語尾(れー・ねー・ちゃい)の前に未来完了の助動詞「とく」を挿入する方がよほど丁寧な命令形になるため、 実際には「とく」入り命令形を多用していると思います。 例えば「いぬる」ならばそれぞれの命令形は「いんどかれー」「いんどきねー」「いんどきんちゃい」になります。

五段 上一段 下一段 カ変 サ変 ナ変
基本形 書く 着る 寝る 来る する いぬる
古い尊敬 かきんさる きんさる ねんさる きんさる しんさる いぬりんさる(いにんさる)
古い命令 かきんさい きんさい ねんさい きんさい しんさい いぬりんさい(いにんさい)
備前命令A かかれー きられー ねられー こられー せられー (いなれー)
備前命令B かいとかれー きとかれー ねとかれー きとかれー しとかれー (いんどかれー)
美作命令A かきんちゃい きんちゃい ねんちゃい きんちゃい しんちゃい (いにんちゃい)
美作命令B かいときんちゃい きときんちゃい ねときんちゃい きときんちゃい しときんちゃい (いんどきんちゃい)
備中命令A かきねー きねー ねねー きねー しねー (いにねー)
備中命令B かいときねー きときねー ねときねー きときねー しときねー (いんどきねー)

*ナ変の「いぬる」は古い尊敬・命令では使います。ただ、備前命令の「られー」を付けた形「いぬられー」は昔、聞いたような気がしますが、あまり一般的ではありません。同様に備中命令形「いぬりねー」と美作命令形「いぬりんちゃい」が実際に使われていたかどうかは不明です。

(5)「おえん」
次なる岡山弁のツボ、否定形の代表は「おえん」です。
岡山弁の「おえん」の意味を考えてみると実にさまざまな意味で使っているようで、すぐに以下のような例が出てきます。
意味 例文
(1) しなければならない 変えんとおえん(変えないといけない)
(2) 不可能、無理 おえるもんか(そりゃ無理)・おえまー(駄目だろう)
(3) 我慢できない つめとーておえん(冷たくて我慢できない)
(4) うまく働かない きこねーてもおえん(聞き耳をたてても無駄だよ)
(5) 禁止 そねーな事をしたらおえん(そんな事をしてはいけない)
(6) 不運 おえりゃーせん(さっぱり駄目だ)
(7) 死ぬ おえんよーになった(死んでしまった)
このような意味の差はどのような使い方をすれば出てくるのやら。
普段から無意識に使っている言葉ながら慄然としてしまいます。

まず(1)のような使い方について使い方を調べてみますと、各地に似たような使い方の言葉があります。
【大阪】動詞未然形+「な」+「あかん」
【兵庫】動詞未然形+「ん」+「ならん」
【岡山】動詞未然形+「にゃ」+「おえん」
【広島】動詞未然形+「んと」+「いけん」

このような言葉の品詞を何と呼べばいいのでしょうか?
なかなか分かりませんでしたが「あかん」を調べてみると「連語」だとか。

辞書によれば「あかん」という言葉は「明かる【動ラ四】」の否定形「あかん」らしいです。
では、それ以外の言葉はどうなっているでしょうか?
「いけん」--> 「いける」これは「生ける(命を保たせる)」という言葉ではないでしょうか。
「ならん」--> 「なる」これは「生る(実る)」という言葉ではないでしょうか。
すると
「おえん」--> 「おえる」これは「生える(芽生える)」という言葉ではないでしょうか。

そのように考えて(1)〜(7)までに当てはめてみると、うまくいきそうです。
「おえりゃーせん」なんかは「うまく芽が出ない」という分かり易い意味になります。

(6) 副詞

次の岡山弁のツボは副詞です。よく使われそうな例を挙げてみました。
副詞
意味

いきのー
直後に
食ぅたいきのーに寝りゃー牛になる
いよいよ
さっぱり・まったく
いよいよ銭にならん
うめーげに
上手に
うめーげにやりんせー
えーげに
好きなように・うまく
えーげにすりゃーえーが(好きにすれば)
えっと
沢山
えっと小遣いもろーたか?
ぎょーさん
沢山
ぎょーさん食べんせー(しっかり食べて)
じょーに
間に
鬼のおらんじょーに洗濯
せーせー
しばしば
せーせーすな(再々するな)
そーで
すぐに
そーでみてる(すぐに無くなる)
ちーと
少し
ちーと待ちょーりゃーバスが来る
ちょう
少し
ちょう右(少し右へ)
ちょびっと
少し
ちょびっと増やしてー(少し増やして下さい)
でーしょう
多少
でーしょう見えるよになった
はー
早くも
はーすんだ(もう終わった)
ばー
ばかり・直後に
みかけばーきにすな(みかけばかり気にするな)
ひっさ・ひっさり
長い間
ひっさぶり(ひさしぶり)
ぶち
ひどく
ぶちまわす(ひどく殴る)【暴力的な動詞だけに使う】
ぼっこう・ぼっけー
ひどく
ぼっこう遅くなった
ほどよう
すっかり
ほどよう暗くなった
ぼとぼと
そろそろ・ゆっくりと
ぼとぼと歩く
もっとで
危うく・もう少しで
もっとで見つかりょーった
やこー
なんか
おめーやこーいねー(お前なんか帰ってしまえ)
ゆーに
ゆっくりと
ゆーにせられー(ゆっくりしてください)
よーよー
ようやく
よーよー暗ぅなった
よーけー
沢山
虫がよーけーおる


(7) 接続詞

方言
意味
用例
〜けー 〜だから 雨がうだりそーなけー、せんたくもんをとらげてーてー(雨が降りそうだから、洗濯物をしまっておいて下さい)。
〜しで 〜になってくると くろーなりしで、けーりがおぞーなるんじゃけー(【日が暮れて】暗くなってくると、帰り道が怖くなるんだから)。
〜にー 〜けれども えーやつじゃったにー、ほてっしもーて(いい人だったけれども、死んでしまった)。

その他として
  • へーから・せーから(それから)
  • へーで・せーで(それで)
  • しゃーけど(そやけど・だけど)
  • しゃーけー(そやから・だから)

(8) 二重母音の変化

次に岡山弁を特徴づける大切な要素として二重母音の変化があります。
母音は a, i, u, e, o の五個しかないので、それを組み合わせる二重母音は以下のものしかありません。

ai (e?) au (ou) ae (ae?) ao
ia iu (yu?) ie io
ua ui (i?) ue uo
ea ei (e?) eu eo
oa oi (e?) ou (o?) oe

左端の縦の四個 (ia, ua, ea, oa) は訛りません。

左端から二つ目の縦の四個(赤色で示した ai, ui, ei, oi)はどれも訛ります。
(ai -> e?) あいつ(aitu) -> えーつ(e?tu) 、あんばい(anbai) -> あんべー(anbe?)、再起不能 -> 性器不能(にしか聞こえないぞ)
(ui -> i?) 香水(kousui) -> こーしー(ko?si?)、悪い(warui) -> わりー(wari?)
(ei -> e?) 稽古(keiko) -> けーこ(ke?ko)、丁寧(teinei) -> てーねー(te?ne?)
(oi -> e?) こいつ(koitu) -> けーつ(ke?tu)、よい(yoi) -> えー(ye?)
【注:香水の変化は正確には ko?si? では無く ko?sy? と記した方がいいかと。】

左端から三つ目の縦四個は(緑色で示した) au, iu, ou が訛ります。
(au -> ou ) 仕舞う(simau) -> しもう(simou)、綯う(nau) -> のう(nou)、買う (kau) -> こう (kou)
(iu -> yu? ) 身請け (miuke) -> みゅーけ (myu?ke)、言う (iu) -> ゆうー (yu?)
(ou -> o?) 工事(kouji) -> こーじ(ko?ji)、掃除(souji) -> そーじ(so?ji)
【注:au -> ou -> o? の変化が連続的に発生した場合は最終的に、仕舞う -> しもー、綯う -> のー、となります。】

左端から四つ目の縦四個は(青色で示した) ae が訛ります。
(ae -> ae?) まえる【薄める】(maeru) -> めーる(mae?ru)、蛙 (kaeru) -> けーる (kae?ru)
【注1:この ae? は正確には「あ」と「え」の中間音に近いです】
【注2:ie, oe が訛る場合もありますが、数が少なく不規則変化なので省きました。
「教える(osieru)」 の場合は訛りませんが(oseeru と訛ると云う異見もありましょうが、備前ではあまり一般的ではありません【あまりにも古くさい発音だという事です】)、語尾に言葉を接続させると osieyou -> osiyou, osiete -> oseete -- e の脱落、あるいは添加です。「どこへ(dokoe)」 -> 「どけー(dokee)」と通常は訛る場合も、疑問文では「どこへー?」と訛りません。同じ疑問文でも後に文が添加されると「どけーいくん?」と訛ります。】

右端の縦の四個 (ao, io, uo, eo) は訛りません。

(9) 助詞の省略(は(が)・に(へ)・を、の省略)

銭が無くなった。 -> 銭ぃのーなった。【が】の省略。
おうぎょうな事は云うな。 -> おうぎょうな事ぁ云われなー。【は】の省略。
いい物を買ってもらう。 -> ええもんこうてもらう。【を】の省略。
火を灯す。 -> 火ゅつける(この場合は明かりを灯す。)【を】の省略。
鳥に餌をやる。 -> 鳥ーえぼーやる。【に】【を】の省略。
家に来てよ。 -> うちーけーよ。【に】の省略。
ここへ来い。 -> こけぇーけー。 【へ】の省略


(10)岡山弁と症状

体の症状を表現する岡山弁には次のような言葉があります。
これらを眺めていると「標準語」は症状を表す言葉が貧弱なんじゃないだろうかと思えてきます。岡山弁を使って話をしていると何の問題も無いのに、それを標準語にするのは無理があるという事ですね。

「手がしびれるんじゃ。」
「そりゃ、手がいじましゅーなるという事かな?せーともきっぽの方かな?」
「いじましゅーなる方じゃ。」
「ほんならやしーぞな。」という具合。
  • (1) 頭が悪い --> 頭に鈍痛がある【頭の具合が悪い、から「の具合」を省いた形かと思われます。決して自分はアホウという意味ではありません】
  • (2) あげる --> 嘔吐する【あげたりせんかのう?(嘔吐したりしないかな?)】
  • (3) さげる --> 下痢する【腹ぁさげる(下痢をする)】
  • (4) いがいがする --> 体がかゆい、のどがかゆい、等の痒みの表現。同様の意味で「はしかいい」とも言う。
  • (5) 傷がはしる --> 傷がヒリヒリ痛む【傷口にアルコールが付いたりした痛みですね】
  • (6) 腹がにがる --> 腹が痛い。腹痛・腹部の鈍痛ないし疝痛。
  • (7) たがう --> 手足の筋肉や関節が急な外力によって痛み始めた場合に「たがう」と言う。【すじぅーたがえた(筋肉が痛む)。どこのすじかのぅ(どこの筋肉かな)。】【注】筋肉の事を「すじ」と言う。
  • (8)-(a) 足がいばる(足がきんばる)--> 足がむくんで痛みがある。長距離を歩いた後の筋肉痛の表現。
  • (8)-(b) でものがいばる(でものがきんばる) --> 吹き出物が化膿して腫れて痛い。
  • (9) うんのびる --> 椅子から立ち上がったらうんのびた(気絶した)。
  • (10) えらい --> 疲れた・だるい・きつい【体がえらいから、休ませて】
  • (11) おろ --> 痛みが弱くなる【腹がにがりょーんがおろーなった(腹痛が改善してきた)】
  • (12) かたえる --> 便秘をする事【腹がかたえる(便秘だ)】
  • (13) かぶる --> 蛇にかぶられた【蛇に咬まれた】
  • (14) きっぽ --> 硬直する【人によって表現範囲が異なるが、手足の痙性麻痺・痙攣に使う場合と足のこむらがえりに使う場合がある】
  • (15) きみず --> 胃液【腹がにがりょーる時にきみずがあがらんかの?(腹痛の際に胃液がゲップになって出てこないかな)】
  • (16) きやきや --> チクチクする痛み【腹・頭がきやきやする】
  • (17) くちる --> 紫斑ができる【ひょんなげなとこがくちてしもうた(妙な場所に紫斑ができた)】
  • (18) ぐり --> 皮下腫瘍【股のとけーぐりができた(股に皮下腫瘍ができた)】
  • (19) けんびき --> 肩関節・頚・背中の上部1/2を表現する場所【けんびきが凝った(左記の場所の筋肉痛)】
  • (20) こずく --> 咳をする【昨日からこずくようになった(昨日から咳をするようになった)】
  • (21) ほろせ --> 赤い小皮疹【湿布をうげーたら、ほろせができとった(湿布をはがしたら赤い皮疹が出来ていた)】
  • (22) こっぱん --> アレルギー性で発生する比較的大きめの白い皮疹【酒が悪かったのか、こっぱんが出来た】
  • (23) ごてる --> 症状が重体になる【ごてとる(症状は危篤に近い)】
  • (24) しもぶくれ --> しもやけ
  • (25) ゾンゾンする --> 悪寒がある
  • (26) フクフクする --> 腹満感がある(便秘気味だ)
  • (27) ムシクシする --> チクチクとした痛み
  • (28) そげ --> 指などに小さな木片が刺さったもの。岡山より東は「そげ」といい、広島より西は「すいばり」と言う。
  • (29) へも --> 尋常性狼瘡
  • (30) てんくら --> 瘋癲
  • (31) はたけ --> 冬場になるとよく出来ていたが、子供の頬の部分的な肌荒れ。
  • (32) はなずり --> 子供が石などにつまずいて膝などを怪我する事。【【子供が】今そこではなずりぅくーたんじゃ(そこで転んで怪我をしました)】
  • (33) ひなえる --> 力がはいらない、手足が思うように動かない。例えば、脳梗塞などで、あるいは正座後で。【XXさん、手足がひねぇーてしもーて、ねてしもーとる(手足が麻痺して立つことができない)】
  • (34) ひねりだし --> 軟膏。【せなーかいーときゃーひねりだしぅぬってつけー(背中が痒い時には軟膏を塗って下さい)。】
  • (35) ひょろどう --> ふらふらする、めまいがする。【酒ぉ飲んだわけでもねーのに朝からひょろどーての】
  • (36) へえと --> 麦粒腫。近年は関西弁の「めばちこ」を使う人が多いようだ。
  • (37) へばる --> りきむ。
  • (38) ほかる --> 火照る
  • (39) ほてる --> 死ぬ
  • (40) あたり --> 体の突出部が赤くなったり痛むようになる事。【「あたりが出来る」と使う】
  • (41) きんきん --> お腹が便秘などで膨らんだ状態。きんきんだま、とも云う。
  • (42) はらあたり --> 腹痛ないし下痢のある状態。【はらあたりゅーしとんか?】
  • (42) はらいばり --> 腹が膨らんだ状態。ほぼ「はらあたり」と同義語