天上吊りの奇麗な睡蓮のランプシェードの写真を見つけたのですが、どうもそれに合うモー ルドは無いようで、良く似ている少し小さめのランプシェードを作成してみました。

リップル・ガラスとの格闘


睡蓮らんぷ1


電源コードを覆う布が一部めくれ上がっていますが、多分オリジナルゆえでしょう。


睡蓮ランプ2


 これは3作品目になります。リップル・ガラスと云う片面のガラス表面が平滑では無く波打ったガラスを背景として多用しました。最 初にそのガラスを見た時には正直面食らいました。こんな奇麗なガラスもあったのかと。しかし、実際の所それは悪夢のようなガラスでした。

 まずガラスを切り出す際になって困惑しました。ガラス切りでは中々上手く切れないのです。平滑な裏面にガラス・カッターで切れ込 みを入れてガラスを割ろうとするのですが、ガラスを掴む道具でガラスを握ってみますと、時々ガラスが不規則に割れてしまい、下手をすれば、バラバラに砕け てしまう。この問題の最終的な解決策は、ガラス・カッターを使うのを止める事でした。つまりガラス用の電動ノコ、すなわちリングソーを使うようになり、初 めて解決したのです。

 さらに、切り出したガラスにコパー・ホイルを巻こうとすると、ガラスの片面が波打っているため、コパーを奇麗に巻けません。巻き 上げたコパーの端が波打ってしまい、あるいは、コパーの一部がガラス表面から浮き上がったりと、これはもう想像を絶する作業になってしまいます。大げさか と感じられるかもしれませんが、コパーを巻くガラスピースが少なければ多少の手間なのですが、多くなってくると、そういう表現になってくるのです。そこ で、ルーターにリップル・ビットと云う波打ったガラス断端を局面状に研磨できる道具を装着して使ってみました。なるほど、こうすれば突出したガラス面だけ をうまく研磨できるようになります。しかし、わずかでも研磨しすぎると、今度は研磨面がコパー・ホイルが覆える範囲を越えてしまいます。リップル・ガラス の扱いの難しさは結局の所、この点に尽きるような気がします。

 使用したガラスは多伎に及びます。もうほとんど無法地帯です。日本製二種、スペクトラム、ウロボロス、ココモ、ヤカゲニー、ブル ズアイ、オセアナ。使用したか否かは別として購入したガラス三十種類程度。なるほど、先達はあらまほしき事かな、となる理由が何となく分かってきました。

 それにつけても、20インチのシェードは流石に重いです。ですので、細いハンダラインでは構造上(つまり地震などの際に)空中分 解しないかと心配になり、ハンダラインを極太にしてみました。後になって聞く所によりますれば、中国製のランプシェードはハンダラインが太く、またそれが 安物の証しとも受け取られているようなフシがあります。それによくよく考えてみれば、ハンダラインが細ければ、それだけ軽量になるわけですから。

 使用したベースは21インチ高のヘンデルのランプベースです。従って、キャップの部分もヘンデル仕様です。キャップとベースは骨 董品として比較的簡単に入手できたのですが、問題はキャップ周囲のリングです。これは日本では入手が難しい。米国では骨董品として$100もあれば入手で きるようですが、、、。そこでその種の金属加工をしてくれる人を探して、手作業でリングを作成していただきました。その結果、今回の作品でもっとも高価な パーツは、このリングになりました。

睡蓮ランプ3


 (参考)ハンデルのランプ

 英語では Handel lamp と書きますので、ハンデルと読めそうです。ただ音楽家のヘンデルは、英語ではHaendel では無く、普通に Handel と書くようです。20世紀の初頭に米国では多くのランプメーカーがあったようです。どのような名前 があったのかと云えば、例えば(www.mosaicshades.com/pcs/PCSCATPAGES/pcsmosiac1.htm)をみていた だければいいかと思います。Handel 社は1885年に Philip Julius Handel と Adolph Eydam によって設立されたメーカーです。Adolph の方は会社設立後7年でライバル社に引き抜かれ、1892年以後はメーカー名もハンデルになったようです。ハンデルのランプシェードの特徴は、リバースペ インテッドと呼ばれるシェード内側に手書きされた(本物を見た事が無いので)絵にある事は御承知の方も多いかと思います。中でも前処理としてランプシェー ド表面をサンドブラスト処理して、糊を塗って窯の中で焼き上げた製品は表面がザラザラした氷のような感触を示す事から、チップトアイス(chipped ice〜砕いた氷)と呼ばれ、高く評価されています。さらに、チップトアイスに加えてサンドフニシュ(sand finished〜砂処理)と呼ばれる処理を加えた作品もあります。それはシェード表面に細かいガラスビーズを塗布して窯で焼き上げる手法です。

 それ以外にもステンドグラスを使用した作品やらスラッググラスの作品などもあります。ハンデルのステンドグラスを使用したラン プ・シェードは、初期のティファニー・ランプ・シェードと似通ったものがあります。

 ハンデルのベースは、ティファニーのベースがブロンズ製であるのと異なり、ブロンズメッキです。ギボシには太さ1/4インチで 20ピッチのオスネジがついています。これでキャップとベースを固定するわけです。キャップとリングは固定されていません。従って、シェードを持って、上 に引っ張れば簡単にベースから外れます。本来、20インチシェードに適したベースの高さは25インチ程度のものになるのですけれど、うまく入手できていま せんので、間に合わせに低いベースを使用しています。それでも、このような構造ですとベース交換に手間はかからないでしょう。

 ハンデルのランプベースにティファニーのリプロ・シェードでは何となく妙な気がしますが、、、。